○災害に備えるマンションの耐震化について

本年1月1日に発生した石川県能登半島地震では、インターネットを含む、通信網が7日間通じない、物資が届かないなど、起こっては欲しくないことが、被災地域で現実となってしまった姿が報道されていました。その中でも非常に気になったのは、輪島市で7階建てのビルが、根元から折れたように横倒しになり、隣の店を押し潰した映像でした。鉄筋コンクリートで作られた頑丈なビルやマンションでも決して安心とは言えないのを実感いたしました。今回の地震の多い死因は、倒れた家屋の下敷きになる圧死と見られており、耐震化の

遅れが課題となっています。

建物の耐震基準は、昭和56年に建築基準法の大幅な改正がなされ。

その耐震基準を基に、昭和56年6月以降の建築確認で建てられた建物を「新耐震基準」、昭和56年5月以前の建築確認で[長廣 成彦1] 建てられた建物を「旧耐震基準」と分類しています。

旧耐震基準では『震度5程度の中規模の地震で家屋が倒壊・崩壊しない』ことが耐震の基準でしたが、新耐震基準では『震度6強から7程度の大規模地震で家屋が人命にかかわるような倒壊・崩壊の被害を生じない、震度5強程度では家屋がほとんど損傷しない』との基準に引き上げられ、新耐震基準は、

震度6強以上でも建物が倒壊しないことを目指しています。

新耐震基準の物件も倒壊していることがわかってきたそうですが、旧耐震基準の物件の被害が特に大きい状況となっています。

また、能登半島地震発生から1か月が経過しましたが、現地では、家屋の被害を受けた多くの住民が避難所等での生活を送っています。こうした状況を知りますと、1日も早く安全安心な日常を取り戻すためには、大規模地震が発生した後の対応も、重要であるとあらためて感じています。災害後の復旧に

ついても準備を更に進めていく必要があるのではないかと考えます。

たとえば、災害初期の段階で重要となる、罹災証明発行のための被災家屋被害判定についてです。罹災証明がなければ、被災者生活支援金の支給や住宅の応急修理が進められません。これは、住家被害の研修を受けた者が対応することになります。他自治体からのサポートがあるかもしれませんが、

首都直下地震は、必要とされる規模が桁違いです。台東区の職員が、

研修修了者となっておく必要があるのではないでしょうか。

また、被災者の住宅確保についても。能登地方では、仮設住宅については、発災後1週間経過してから、みなし仮設住宅を確保することになりました。面積が23区で一番小さい台東区において、仮設住宅の確保をどうするかも課題です。台東区は他区と比較して観光客向けのホテルも多いことから、今から災害時利用の提携を更に強化[長廣 成彦2] するなども必要です。

さらに、建物所有者の特定についてです。災害時にマンション等の建物が倒壊した際に、その建物のオーナーが不明の場合、被害者の特定や補償の手続きに影響を及ぼす可能性があります。不明の場合、台東区が建物の[長廣 成彦3] 倒壊現場周辺の住民登録や建物管理組合などの情報を活用して、所有者等の特定を行う必要がありますが、確認に時間がかかってしまいます。いまからでも所有者の提出義務を設けるなど今から準備が必要なのではないでしょうか。

このほかにも、震災対策は課題が山積していますが。今回は、建物の耐震について伺います。

区においては、建物の耐震化を進めるために「台東区耐震改修促進計画」を策定していて。今までも、旧耐震基準の木造住宅に対する耐震化助成や耐震診断の無料化、老朽建築物等の除却費用の助成。平成28年には木造住宅の耐震改修工事助成[長廣 成彦4] の限度額引き上げも実施し。その他にも緊急輸送道路沿道建築物等耐震化助成など、対策強化に努めてきました。台東区の令和2年の耐震化の状況は、新耐震基準の耐震性を有する住宅の割合は92.6%となっていて、今までの取組を評価していますが、更なる対応は必要です。

例えば、木造住宅については、「筋かいなどの接合部の接合方法」などを明記し、耐震性を向上させるための建築基準法の改正が2000年に実施されたことから、新耐震の中でも、それ以降の建物を「2000年基準」として分類しています。現在、区が実施している耐震助成では、この2000年基準前の木造住宅には対応していなかったので、それら住宅の対応が課題となっていました。

来年度の予算では、2000年基準以前の新耐震基準の木造住宅についても耐震助成を拡充することが計上され、大変評価しています。

しかし、区民の8割が暮らす集合住宅への対応。

平成30年度マンション実態調査では、旧耐震基準で建築された区分所有マンションで回答のあった77件のうち、耐震改修を実施したものは3件のみとなっています。

首都直下地震が来た場合は、新耐震基準の耐震性を有していないマンションが倒れてしまうのではないか、と不安に感じています。当然、木造住宅の耐震化は最優先ですが、十分な耐震性を有していないマンションの早期解消に向けた対応も必要だと思います。

今後、首都直下地震の発生が危惧される中、人的被害や物的被害を最小限に抑えるためには、ハードとソフトの両面での万全な備えが求められますが、能登半島地震での建物被害をまのあたりにして、あらためて住宅の耐震化の重要性を感じています。

まだ、対応が不十分である集合住宅への対応。マンション居住者や地域の安全安心の確保に向け、十分な耐震性を有していないマンションについても、耐震化の更なる促進に取り組んでいくべきと考えますが、区長の所見をお伺いします。

 

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