今後の行財政運営について

この決算年度である令和5年度では、新型コロナ感染症が5月初旬に5類へと移行し、ほぼコロナ禍前の日常となりましたが。コロナワクチンなどコロナ対策経費は、純剰余金などにも多大な影響を与えていて。

また、物価高騰によるインフレが高止まりのまま続いていて。物価高騰対策だけで約457千万円の規模となっており。5年度も引き続き、それらが歳入歳出両面において、区財政に多大な影響を与えた決算となっています。

決算に係る資料や、5日間の委員会審議における答弁などから、令和5年度の台東区の財政状況を分析してみると。

 

歳入総額は、前年度と比べて約10億のマイナスで約1248億円となっていますが。

これは、前年度と比べて、コロナ対策経費などの実績により国庫支出金や繰越金などが減少し、特定財源全体では369千万円の減額となったことが影響していて。

地方消費税交付金は対前年で1.5億円のマイナスとなってしまったものの。区の主要な財源である特別区交付金が約14億円、特別区税が約106千万円増加しており、一般財源は265千万円の増額となっています。基金残高も一般会計で、31億増で約607億円。区財政は、堅調に

推移しているような印象を受けることができます。

 

しかし、国による税源の偏在是正の問題。すでに、法人住民税の一部国税化や、地方消費税の清算基準の見直し、ふるさと納税制度の導入など、

現在までも区の財源を散々取られてきましたが。

更なる偏在是正について、

「「骨太の方針2024」の中で「行政サービスの地域間格差が過度に生じないよう、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む」となされた」との国の検討状況についての答弁もあり。歳入においては、依然不透明な状況が続いていきます。

 

歳出面でいえば。

子育て支援。

制度開始から10年が経過した子ども子育て支援新制度のランニングコストは約141億円。制度が始まる前の平成26年度と比べると、78億円も増加しています。この制度の事業に含まれてない子育て支援事業には、産後ケア、放課後子供教室、要保護児童支援ネットワーク、ベビーシッター利用支援、出産・子育て応援ギフト、出産費用助成、小中学校給食食材等支援、等があり。子育て支援経費は、近年大幅に増加していますが。

今後も、保育の質の確保や、放課後における居場所の確保、要保護児童支援など、課題は山積あり。今後も多額な費用が必要となります。

 投資的経費は、一般会計では前年度と比べて、約13億円増えて94億円。昨年度見直しが行われた施設保全計画では、30年間で1610億円との試算がなされていますが。

5年度も施設整備でインフレ条項が適用され、また、施設整備における入札においても、入札事業者が集まらなかったり、予定価格の中で納まらず不調となるなど課題も表れだしていて、入札金額も含め対応が必要となってきています。この試算時に比べて建設コストは大幅に上昇していくことになるでしょう。

また、この計画の試算に入っていない、凌雲橋の改修や小包跡地の整備、本庁舎の改修も視野に入れれば、今後莫大な費用が必要となります。

 

その他にも、人件費の増や、障害者福祉サービスの充実や施設整備、まちづくりも、インフラ整備を伴うことから、将来的には、多額な経費が掛かっていきます。

 

物価高騰の影響でいえば。

賃金も上昇傾向にあるので。住民税も増えていくことにはなるとは思いますが。制度上、その効果は一年遅れとなり、タイムラグが発生します。また、助成金などのインフレを考慮した金額設定など、審議の中で課題が述べられていました。来年度の予算編成では、各事業においてインフレに対応した予算を、しっかりと計上して頂きたいと強く要望したいと思いますが。

インフレによる価格の上昇などによる歳出総額の上昇率に、歳入の伸びが追い付けていけるのか、という懸念もあります。

 

また、昨今の利上げの状況。

20年以上続いてきた低金利の時代が幕を閉じる可能性が高まってきていて。金利上昇の影響では、「経常収支比率がその分上昇し、財政の硬直化の要因となる」との答弁もありました。

 さらに、区財政における、中長期的な視点。

審議の中で、財政収支推計を伺ったところ。

「令和7年度からの5年間で約727億円の財源不足が生じる見込みであり、区財政は今後厳しい局面に立たされる可能性がある」との答弁もありました。

依然、歳入は不透明といわざるを得ず、歳出は増加していく。決して楽観できる財政状況ではないと思っています。

 そういった状況下でも、区民のニーズの変化などを的確にとらえ、区政にしっかりと反映していく。また、安定的に事業を継続していくことが最重要であります。

 社会的コンセンサスとして、行政に求められる役割は広がっていて。

新たな行政ニーズへの対応や、国や都などの制度変更に伴う事業は、今後も増加していくことでしょう。しかし、財政的にも人員的にも、おのずと限界はあるはずであり。今の事業を今の規模のまま維持し続けることはできないのではないでしょうか。

先日の企画総務委員会で、事務事業評価の報告がありましたが。

「行政計画以外の事業を対象としたこと、類似の事業の整理が進んだことなど」

なかなか踏み切れていなかった事業の縮小や廃止が示されました。

行政の行う事業で、まったく無駄な事業は行われていませんが。時代の変化や、制度の変更などにより社会的コンセンサスも、ニーズも変化していきます。このように変化が激しい時代では、事業の統廃合等の改善をしっかりと行うことで、新たなニーズに対応せざるを得ないのではないでしょうか。

 今後も、新たなニーズをしっかりととらえ、より多様化・複雑化する行政需要にしっかりと対応していくためにも。今後も事務事業評価を活用し、更なる事業の見直しや業務改善を推進するべきと思うがどうか。区長の所見を伺います。

 

プロフィール

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