DXによる新たな区内課題への対応について

台東区では、犯罪の防止や安全確保を目的に、地域を網羅的にカバーするよう巡回ルートが設計され、地域の課題解決に貢献してきた区内巡回業務があります。

台東区ではこれまで、巡回業務を通じて地域の安全と快適な環境を守るため、さまざまな取り組みを行ってきました。例えば、学校や幼稚園などの周辺での防犯パトロール、喫煙マナーの指導や吸い殻の回収、区立公園の巡回、放置自転車の取り締まりなど、きめ細やかな対応が進められてきました。しかしながら、近年では新たな地域課題が浮上しており、従来の取り組みだけでは十分に対応しきれない状況が生まれています。

まず、最近、顕在化した課題として、民家や公共施設への落書きの増加が挙げられます。2023年度の区民アンケートによると、「落書きが増えた」と回答した住民が前年比で15%増加しており、治安や景観の悪化を懸念する声が強まっています。落書きは単なる見た目の問題にとどまらず、治安悪化の兆候とも捉えられるため、迅速な対応が求められます。

次に、解体現場におけるルール違反の問題があります。近年、解体現場での騒音や粉じん防止対策が不十分な事例や、解体許可の手続きが適切でないケースが報告されています。これらは近隣住民とのトラブルを引き起こし、特に住宅地と商業地が混在する台東区では、住民生活への影響が深刻です。さらに、令和72月末時点で住宅宿泊届け出数が927件に達し、コロナ禍前の水準に急増しています。この増加に伴い、騒音やゴミ出しルールの不徹底が問題となり、観光客の増加による路上ゴミや吸い殻の投棄も目立つようになりました。これにより、地域の生活環境が悪化しているとの声が住民から寄せられており、改善を求める意見が強まっています。

しかし、これらの新たな課題対応を現行の巡回業務に追加することは、現時点では難しいと考えます。現在の業務はすでに多岐にわたり、これ以上の負担を委託内容に加えると、既存業務への注力が散漫になり、効果的な指導や取り締まりが困難になる恐れがあります。また、関係課の職員の労働負担も深刻です。決算特別委員会の報告でもあったように、正規職員や会計年度任用職員の超過勤務時間は大幅に減少しておらず、現場での確認作業が過重な負担となっています。限られた人員で新たな課題に対応することは現実的に難しく、区として職員の労働環境改善も急務です。

こうした状況を踏まえ、DXを活用した対応例をあげさせて頂きます。

1点目は2014年からスタートした、千葉市が導入しているICT(情報通信技術)を活用した仕組みの「千葉レポ」。市民が道路や公園遊具の損傷などの課題をスマートフォンなどで報告し、その情報を行政や他の市民と共有することで、合理的かつ効率的に解決を目指すものです。

報告された内容はデータベース化され、優先度や緊急性に応じて対応が進められています。

東京都も昨年からスマートフォンのカメラと位置情報を利用して、都民の皆様が発見した道路・公園・河川の各施設における損傷や不具合を投稿できるアプリMy City Reportを開始しています。 

そんな中、練馬区では独自に「ねりレポ」を開始しています。練馬区内の街路灯や区道の舗装設備等の不具合に加え、道路上の不法投棄やらくがきなどを撮影し、写真付きで手軽に住民が区に投稿でき、投稿を受けた区は、できるだけ早く対応し、不具合を解決しているようです。

このように、区民が撮影した写真付きのレポートが即座に担当部署に送信され、修繕スケジュールが迅速に組まれることで、従来の電話や書面による報告に比べて対応時間が大幅に短縮されています。また、区民が課題を可視化し合うことで、地域全体の意識向上にもつながっており、行政と住民の協働が強化されています。 台東区においても、このような仕組みを応用することで、新たな課題への対応が効率化できると考えます。解体現場のルール違反についても、近隣住民が違反状況をリアルタイムで報告できる仕組みがあれば、迅速な現地確認と指導が可能となり、トラブル拡大を防げるでしょう。さらに、住宅宿泊施設や観光客による問題に対しては、ゴミ出しルールやマナー違反の報告を住民から受け付け、データを分析することで、問題の多いエリアや時間帯を特定し、ピンポイントでの対策を講じることができます。DXを活用したこのようなシステムの導入は、現行の巡回業務への負担を増やすことなく、新たな課題に対応する余力を生み出すと同時に、職員の過重労働を軽減する効果も期待できます。また、住民が直接課題を報告することで、区政への参加意識が高まり、行政と住民の信頼関係がさらに強化されると考えます。ただし、システム構築には初期投資や運用コスト、住民への周知活動が必要であり、高齢者などデジタルに不慣れな層への配慮も欠かせません。これらの課題をクリアするためには、他自治体の成功事例を参考にしつつ、台東区の実情に合わせたカスタマイズが求められます。

 

以上はあくまで一例で、これからも区内には、新たな地域課題が発生してくると考えます。その新たな地域課題に対して、様々なデジタル技術を活用して対応していくべきと考えますが、区長のお考えをお聞かせください。

 

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